イベントレポート「K-NIC Basic Seminar 転ばぬ先の杖!起業の1年目、お金はどこから集めたらいい?」
創業1年目は何かとお金がかかるもの。お金はどうやって集めてきたらいいのでしょう?
その疑問を解決すべく、資金調達に造詣が深い澤井サポーターにセミナーでお話しいただきました。
本記事はそのイベントのダイジェストになります。
「起業にこんなにお金が必要と思わなった…」を防ぐために、この記事を読んで計画的に起業計画を立てましょう。
登壇講師
澤井 泰良氏
大学卒業後、日本で最初のベンチャーキャピタルであるエヌイーディー(株)(後に安田企業投資㈱)に入社し、以降20年間一貫してベンチャー投資に関わった。パソコン通信の時代から、ITベンチャーの勃興、ITバブル崩壊、リーマンショック、GAFAの隆盛まで見てきた。自身も第二種情報処理技術者の資格を持つ。IT分野以外でも、消費者向けサービス分野、モノづくり分野での投資実績が豊富。2012年に独立し、(株)グランツカンパニーを設立。現在は補助金申請支援を中心に、中小〜ベンチャー企業の経営コンサルティングを手掛けている他、IT知財のビジネスへの活用を推進する日本IT特許組合の理事やミラサポの専門相談員も兼ねる。
K-NICレギュラーサポーター。
こんな方におすすめ
・技術を事業化したいスタートアップ
・これから起業を考えている大学や各種研究所の研究者
・大学の産学連携部門の方で、資金調達の基本を知りたい方
目次
・特定創業支援事業について
・融資について
・投資/出資について
・補助金について
・レベニューシェア
・事業計画
・会計と資金調達のまとめ
特定創業支援事業について
自治体が創業者や創業予定者を支援するために実施している事業です。この事業に参加することで国の創業支援策が受けられます。
国の創業支援策の例として、登録免許税の厳格、日本政策金融公庫の創業融資を申し込む際の要件緩和、自治体の創業融資利用の際の優遇、小規模事業者持続化補助金の創業枠への申請が可能にあるなどです。
創業スクールの修了や創業相談の利用などを経て、事業を修了したという証明書が発行されます。
融資について
融資はポピュラーな資金調達方法です。
国営だと日本政策金融公庫、民間だと各種銀行や信用金庫などがあります。
既に担保がある・利益が出ている企業だとお金は借りやすいですが、創業者の場合は売り上げも担保もないことが前提なので金融機関としては貸しづらいのが現状です。
それでは創業者が融資を受けられなってしまいますので、その策として国や自治体がお金を借りられる仕組みを作っています。これを制度融資と言います。信用保証協会という融資を保証してくれる団体があり、融資を保証してくれます。また自治体が、利子の区分について一部補助するパターンや、信用保証協会への保証料を代わりに出してくれるパターンもあります。(自治体によって異なります)制度融資は創業者にとっては使いやすい融資になります。
投資・出資
株式を発行し、VCに引き受けてもらう方法です。会社が上場した後に株式を売却・現金化し利益を出すという方法です。ですので、出資には出資先、つまり投資・出資を受けた企業の株式上場が前提になります。
(投資や資本政策についてはこちらの記事もご覧ください!)
クラウドファンディング
クラウドファンディングサイトを閲覧している方から資金を小口でたくさん集める方法です。
新しいものを作りたい場合は購入型になります。開発費用などを集め、リターンとして出資者に製品を返します。前受金のようなイメージです。
株式投資型は企業が株式を発行し、一般の方に引き受けてもらう方法です。少数のVCから集めるのではなく、少額を多数の人に持ってもらうというイメージです。
補助金
国や自治体が民間企業の活動を補助するために提供する資金です。返済は不要です。開発のため、販促のため、ソフトウェア購入のためなど目的や使途に合わせて種類が変わります。
流れとしては、企業が補助金を行っている機関に補助金申請し、採択されたら、採択された補助金に応じた活動を行います。結果を報告し、機関が検査してお金を使ったことが確認できると補助金が支払われます。
主な補助金として、小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金・ものづくり補助金・創業系補助金があります。小規模事業者持続化補助金には創業者枠という特別な枠があり、特定創業支援事業の証明書があると申請できます。この枠は上限が200万円となります。
IT導入補助金は使う費用のタイプによって2種類あります。金額は450万円または150万円になります。ものづくり補助金は開発のための補助金です。従業員の数によって金額が変わります。従業員数が多いと金額も上がります。使途としては革新的な新製品・新サービスの開発費、革新的な生産プロセスの設置などがあります。開発費用や外注費などが対象になります。
自治体によっては創業者支援のための補助金もあったりします。
もう少し細かく見てみましょう。
小規模事業者持続化補助金は販路開拓や業務効率化に取り組むための補助金です。
広告費・販促費・開発費(売り上げを上げるためのもの)も対象になります。また業務効率化については顧客管理ツールの購入費なども対象になります。申請要件は小規模事業者であることです。創業者の場合は200万円で申請できる枠があります。この創業者枠を使うには特定創業支援事業を受ける必要があります。
補助率は2/3です。これはどういうことかと言うと、例えば300万使えば200万円が、使った金額が150万であれば100万円が返ってきます。
年に4回募集があります。注意点は実施しているのが商工会議所と商工会が協力して運営しているので、商工会議所地区と商工会地区で申請先が異なることです。自分の地域が商工会議所がある地域なのか商工会がある地域なのかは確認が必要です。
ものづくり補助金
開発のために使う補助金としてはポピュラーなものです。革新的なサービスを作るためにシステムを作る、革新的な製品をつくるため外注するような費用が対象になります。創業5年以内は審査において加点されるので、少し採択されやすくなります。
補助金利用の注意点
・入金のタイミング
補助金は後払いになります。採択になったからといって、すぐに貰えるわけではありません。
補助金が支払われるまでの間は自己資金や借り入れた資金でやりくりすることになります。
・申請時の注意点
申請要件をよくチェックしましょう。中小企業対象の補助金ですが、さらにプラスアルファ創業者への支援として使えるものがあるかもしれません。
記載の注意点や審査項目も募集要項には掲載されています。間違いやすい場所の確認や審査項目の抜け漏れ防止のためにも、しっかり熟読されることをお勧めします。また期限も要注意です。どれだけ内容が素晴らしくても期限切れだと受理されません。また添付資料漏れも不備として見なされるので審査されない可能性もあります。
・補正について
補助金事務局が申請書類等の誤りを指摘することです。ただし、申請する方全員が受けられるわけではありません。申請する方の多くが締め切り日の1週間前に提供されます。その場合事務局の方も指摘する余裕はなくなります。一方、締め切り日の1月前ほどに提出すると、事務局の方もまだ余裕があるので確認・誤りを指摘してくれることもあります。できるだけ早く申請する方がおすすめです。
・補助事業開始後
お金の管理の仕方や費用計上の準備物など補助事業の詳細を書いている手引きをチェックしましょう。
また、補助金の申請内容に対して交付決定を受けているので、申請時と変更が生じたら事務局に確認しましょう。場合によっては補助額減額にもなりかねません。
レベニューシェア
企業提携の一形態です。例えば企業がソフトウェアを開発したい場合、開発費は開発企業に全てもってもらいます。開発した製品の売り上げが立ったときに、売り上げや粗利の一部を支払う仕組みになります。将来払うような資金調達の方法になります。初期投資が避けられることがメリットです。事業が成功した場合は費用が嵩むデメリットもありますが、企業間の契約で決まるので、お互いに納得できる落としどころを見つけるのが必要です。開発会社には大きなリスクになります。初めて会う開発会社は引き受けてくれることはあまりありません。昔からお互いに知っている開発会社であれば受けてくれる可能性もあります。
事業計画
融資でも補助金でも事業計画は提出することになるので、早めにつくっておきましょう。
会計と資金調達のまとめ
負債を利用して資金を得るのが融資、資本を利用するのが出資になります。
売上を利用するのがクラウドファンディングの購入型、営業外収益だと補助金、費用を負担してもらう代わりに将来の収益を渡すのがレベニューシェアになります。
それぞれメリットデメリットあるので、会社の状況や必要資金の金額を考慮して適切な方法で調達を考えてください。
澤井サポーターはK-NICの企業・経営相談会にて、個別相談会にもご対応いただいています。
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