パートナーリングが研究開発型ベンチャーを成長させていく
川崎市にある起業家支援拠点&コワーキングスペース・K-NICを利用しながら活躍されている起業家に、
起業までの軌跡やK-NICの便利な活用方法などをインタビューするシリーズ。
今回は、経営経験者と研究者がタッグを組んで事業を進めている、株式会社RESVOの志村さんにインタビュー!
人的リソースも設備もない研究開発型ベンチャーが、成長していく上で大切な「パートナーリング」について伺いました。
<起業家プロフィール>
株式会社RESVO
志村 正俊氏
【取締役(CFO) 法務・財務担当】
学生時、起業を経験。
大手制御機器や化学メーカー等でのマネジメント経験を経て2018年より現職。
精神疾患で苦しんでいる人を救いたい!という想いから始まった
---御社について教えてください。
2015年に精神疾患の研究を行うベンチャー企業としてスタートしました。
代表取締役・研究開発の島根大特任教授の大西と、事業、財務、法務担当でCFOの私がメインに運営しています。
現在当社は、新たな精神疾患治療法の研究開発と、
手軽にメンタルストレスチェックができる「バイオピリン尿検査サービスパック」の販売の両軸で活動しています。
「バイオピリン尿検査サービスパック」は我々の精神疾患研究の副産物を実用化したものであり
2021年9月に発売した商品です。
メンタルストレスを尿から客観的に測定するキットです。
この商品の販売の傍ら、新たな精神疾患の治療法の研究開発を同時進行で進めています。
精神症状にアプローチをしている既存薬は副作用が出ることもあるので、
脳神経科学者がいることもあり、精神疾患の根底にある脳機能障害に直接アプローチする治療法の開発を目指しています。現状そのようにアプローチしているところは少なく、当社の強みにもなるかと思います。
ーー研究開発と商品販売を同時進行されているんですね。商品についてですが、副産物から商品になった経緯は?
もともと治療薬と診断薬をつくろうと思い研究していました。
しかし我々の見通しでは、薬ができてお客様の手元に届くには2030年近くまでかかることがわかりました。
その間にもメンタルストレスや精神疾患で悩んでいる方はいらっしゃる。
そこで、今あるものを使って何とか力になれないかと、今までの研究開発過程で発見されていた新規ストレスマーカーを商品化してお届けすることを決めました。
この商品は尿を使う仕様ですが、尿を使うことになったのも、研究開発が進む中でのことでした。
最も安定して、最もお客様が採りやすいものは何かと突き詰めて辿り着いたのが「尿」だったんです。研究の結果をこのキットに詰めて、販売しました。
研究開発型ベンチャーの事業を推進するパートナーリング
ーー商品化をする上で苦労されたことは何だったのでしょう?
非常に多くのパートナーさんと協業する必要がありました。
というのも、研究開発型ベンチャーには、人的リソースも設備リソースもありません。そんな中商品をつくってお客様にお届けするには、非常に多くのパートナーさんと協業する必要がありました。想いを共感いただくパートナーさんを見つける、かつパートナーさんが持つリソースを活用しながら、お客さんに届けていく関係を形成していくことには非常に苦労しました。今は同じ想い・熱量を持っているパートナーシップができています。
ーーパートナーと言いますと、事業担当の志村さんと、研究開発担当の大西さんのパートナーシップもありますよね。
はい。大西は脳神経科学者で島根大で特任教授を務めながら、当社の代表取締役と研究開発を担当しています。
大西には、どうにか精神疾患の問題を解決したいという想いがありました。
アカデミアで研究する中で、「技術を困っている人に届けたい」という想いを聞き、とても感動したんです。
私も「自分が持つ技術をより多くの方に届けたい」という想いがあり、意気投合しました。ただ、大西は研究開発の人間で、ビジネスパートナーを必要としていました。
そこは私が起業・経営の経験があったので、お互いに足りないところを補い合いました。
起業の経験があったのですか?
はい。大学時代に起業したことがあります。この時の経験が今にも繋がっていますね。
その後大企業に入りました。大企業ではダイナミックな仕事をし、充実していましたが、自分が持つ経験やノウハウをより多くの方に届けたいという想いが根底にはあったんですね。そんな時に大西に出会ったんです。
ーーまさに研究開発を引っ張る研究者と、経営を引っ張る経営者のパートナーシップですね!
はい。がっちりパートナーリングしていますが、言い合いになることもありますよ。
ーーそれぞれ苦労されている点は違いますよね。研究開発・事業それぞれで苦労されていることは何でしょうか。
研究の苦労面としては、「研究の成果を困っている方に届けるまでには高いハードルがいくつもある」と大西はよく話しています。
事業の方では、やはりパートナーリングですね。世の中が良くなればいいという想いは共通しているものの、ベンチャー特有の悩み、大企業特有の悩み、それぞれのロジックがあるので、擦り合わせは大変です。
それだけに、それぞれの譲れるところ・譲れないところが一致して、一緒にゴールに向かっていける関係か築けた瞬間は代えがたい喜びがあります。
志村さんのお話を聞いていると、研究開発系ベンチャーが成長するには、共創・パートナーリングが本当に重要なんだと感じます。
重要ですね。研究開発系ベンチャーは生産設備も販売チャネルも人的リソースも不足していますから。
補い合え、同じゴールを目指す仲間作りは本当に重要で、楽しいことです。
K-NICとの繋がり
ーーK-NICを知ったきっかけは?
川崎市の方の紹介です。K-NICのコミュニケーターの方とも何度か話させていただきました。
作業ができる場所として、大変ありがたく思っています。
ーーK-NICのような起業支援施設を活用するメリットはありましたか?
いろんな企業さんを紹介してもらったのはありがたかったですね。しかも紹介先の企業さんの事情も熟知されているので、話がとてもしやすかったです。セミナーにも参加させていただき、勉強させていただいています。
精神疾患で苦しむ人を救いたい―経営者×研究開発者ベンチャーの思う未来
ーー今後のビジョンを教えてください。
直近の課題は「バイオピリン検査サービスパック」をよりユーザーフレンドリーにすることです。どうしたらもっと軽く、もっと使いやすくなるかを日々考えています。
今、本当にストレスが軽減されたか客観的に判断できるものは、あまりないようです。
その点が面白いねと評価されています。メンタルストレスを軽減させる商品を扱われている企業さんと組んで、本当にメンタルストレスが軽減されたかを検証することに活用してもらうという取り組みも進めています。